広告費用の算入基準

広告管理職がすべき10のこと
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広告とお金に関する事項で
・キャッシュの流出入に対する処理と判断
を取り上げていきます。

ポイントは3つあります。
1、なにが広告費であるか。特に「寄付」との峻別
2.経費と資産の峻別
3.共同広告での費用の按分

岡田米蔵氏のテキスト「広告の実務虎の巻 広告マネジメント(1995年)」を参考引用し、いくつかの補記をします。

1.広告費への算入判断

(1)なにを広告費に計上するかという問題

企業内における会計処理の基本は原価計算基準に基づいている。これは企業会計原則や商法の会計諸則がベースになっている。しかし、これらはいわばガイドラインで企業各社によって、実務面では、このとおりの会計処理がおこなわれていないのが実態で、これに基づいた有価証券報告書に差がでるのは当然である。
(岡田、P.189)

 

「広告宣伝費の判断基準は次の四項目である。
①支出目的が宣伝効果を意図したもの
②支出の対象は不特定多数
③贈与する物品は、いわゆる小物商品で、その価格は少額のもの。
ただし、このほかネオンサイン、陳列棚、自動車などの広告宣伝用資産がある。
④通常要する費用であること。」
(岡田、P.191)

仕事として広告を定義するで触れた通り、何が広告であり何が違うかを峻別する必要があります。様々な手法、取引形態が想定されますが、基本的には主たる目的が①であることが判断基準になろうかと思います。
実務的には、つど経理部門や財務部門と調整の上で決定し、ルールとして定めることになります。

問題は③であり、提供用の物や経年利用する物についての判断があります。
特に、提供用の”物”は税法上も「寄付」との明確な峻別と管理が求められます。ただ、この判断基準についても①の主たる目的により判断できます。
(抽選などによる商品提供、試用品、見本)

2.資産と繰延経費

広告で発生したお金は払って終わりではなく、税務と関連した経費計上の処理があります。特に資産として計上される可能性がある購入物も、広告にはいくつかあります。経費として購入したつもりが、PLでは原価計算された計上に留まり、実際のキャッシュ・アウトとの差が生じることもあります。
これにより、会計基準での予算実績対比では予算内に収まっていたとしても、キャッシュ・アウトは確実に出ていることになるので、正しい把握ができていないと経営判断を誤らせることを招きかねます。

当期広告費と広告資産に大別できる。この広告資産とは、支払いは当期に行われ、その広告効果は次期以降に発生する広告支出で、資産として次期以降に繰り延べられる広告資産である。
①広告固定資産
②広告用繰延資産
③広告用棚卸資産
④前払広告宣伝費
(岡田、P.193)

固定資産に該当し得る広告は、CF、映像といったものや、商標登録したキャッチコピー。音楽なども含まれる場合があります。
繰延資産は経年で発生する広告は、例えばビルボードなど。減価償却や、掲載費の月割りでの経費計上などで運用するケースもあり得ます。

実務上注意しておきたいのは、④の前払広告宣伝費です。期をまたぐ次期に、来期の出稿費を支払いサイクル上やむなく前払いしなければいけない場合などが該当します。

3.共同での広告実施に伴う費用の按分

企業を横断する場合はもちろん、関連会社、また厳格化すると企業内の事業部単位で起こり得ることです。
簡単にいうと、AとBという法人或いは部門間で共同して広告を出稿実施した場合、その経費をAが全額負担し、Bが負担しない場合に生じる問題です。
都合だけを聞くと、Bに経費がないという理由が挙げられますが、共同広告によりBも受益者となり発生した経費負担及び実行責任を負から逃れられません。

「親子会社、関連会社間で実施される協働広告の場合、税法上留意したい点がある。他の経済取引と同じように、こうした共同広告を実施する際には、広告活動実施前の契約により、『合理性をもった負担比率』で、広告宣伝費総額の一部を負担することになる。 しかし、これに反して広告活動実施後に負担比率を決めたり、この負担比率に合理性がみられないときには、『無償の贈与』とも区別し難く、税務上は『寄付金』と認定されるケースもあり得ることになる。」

■負担比率の基準
①広告スペース、タイムスペース
②当該商品の売上高予算比率
③企業や商品の知名度ランク別、その他予想される広告効果比率
④企業規模比率
(岡田、P.195)

分担比率の算出方法に明確な基準はありませんが、客観性に優れるという点で①による比率の決定が適当と考えます。一目で利害関係者以外の誰もが割り方に対して納得できる、広告占有スペースで割ります。②③は流動的であり、④もまた観察する角度の取り方により評価は分かれます。